含み益が数日続いた。
+820円、+1,200円、+1,500円。
ニヤついて画面を見ながら、頭にひとつの考えが浮かんだ。
「これ、もっと買ってたら、もっと増えてたんじゃない?」
…魔の言葉。
「ちょっと買い増す」のは罪じゃない、と思った
最初の自分ルールは「10万円だけ」。
ぎりぎり眠れる金額。 痛いけど、生活は壊れないライン。 ちゃんと考えて決めたはずの、自分との約束。
最初に買った銘柄が、じわじわ含み益を出してた。 その画面を眺めながら、頭のなかで別の声が湧いてきた。
「上がってる分の余裕で、同じやつをもう1単元だけ足しても、バチ当たらないでしょ」
「ここで見送ったら機会損失じゃない?」
日本株は1単元100株。 株価×100が最低ロットだから、好きな金額をぴったり、みたいな器用な買い方はできない。 最初に選んだのは株価1,000円ちょっとの銘柄で、1単元でだいたい10万円。 最初の10万円分は、これを1単元持ってる状態だった。
「値上がりしてる、その分の余裕で同じ銘柄をもう1単元だけ」って自分に言い訳して、ポチった。
頭の中では「もう1単元だけ」のつもりだったのに、気づいたら、合計20万、2単元——ロットがそのまま倍になってた。
その日のうちに、普通に下げた
朝、市場が開いた直後で+1,500円。
昼休みに見たら、-2,000円。 午後、客対応の合間にチラ見、-6,500円。 15時半、場が引けたところで、-10,300円。
…1万円、消えた。
率にしたら、20万のうちの約-5%。 チャートで見れば、ごく普通の1日の値動き。 ロットを倍にしてなければ、たぶん「ちょっと下げたな」で済んでた幅。
その瞬間、頭の中でちっちゃい自分が言った。
「いや、なんでロット上げた?」
知ってた。 最初から、知ってたのに。

痛いのは「金額」より「気持ち」のほう
1万円が痛くないとは、もちろん言わない。 給料日前なら結構しんどい額。
その夜、「あと何台売れば1万取り戻せるんだろう」って自然に頭の中で計算してた。 インセンティブ1台5,000円。 2台売って、ちょうどトントン。 2台って、客に頭下げて、ローン組んで、納車まで対応して、やっと2台。
数十分のクリックで、それが消える。 ちょっと、頭が変な気持ちになった。
でも、それより堪えたのは、
- 自分で決めた「10万まで」を、自分から壊した
- 数日勝った程度で、調子に乗ったこと
- 落ちる時の景色を、自分はまだ知らなかったこと
この3つだった。
「俺、たぶんセンスない」と一瞬思ったけど、 たぶんセンスじゃない。 ただの、よくあるパターンに、自分もきっちりハマっただけ。
いま思うこと
含み益が出ると、人は強気になる。 強気になると、ルールを破る。 ルールを破ると、だいたい刺される。
シンプルすぎるけど、本当だった。
「同じこと2度はやらないようにする」と書いてみるけど、それすら自信ない自分が、ちょっと情けない。
正直、たぶんまた同じことをやる。 自分はそういう人間だ、ってことも、最近うっすら自覚してきた。
それも込みで投資なんだろうな、と今は思ってる。
ルールを守るのと、ルールを破るのを、両方繰り返しながら、少しずつ自分の実寸を覚えていく。 そういう過程の真っ最中、ってことにしておく。